ACCIAIOは2012年の作品。Acciaioはイタリア語で鋼鉄、鉄、スチールと言う意味です。
予告編を見る限りでは女子高校生2人の青春物語だと思っていたけれど、
実際に見てみると家族の物語でもありました。地方の鉄鋼の街に住む主人公達。
同じ団地に住む女子高生の2人、アナとフランチェスカはどこへ行くのも何をするのも一緒。
2人しか知らない秘密の隠れ部屋があり、そこで2人は多くの時間を過ごします。
そして、アナの兄アレッシオは街の大きな製鉄所に勤務しているけれど、
更に生活費を稼ぐために鉄や銅線などを街頭から失敬して売りさばいています。
単調で満たされない日々。抜け出したいと思っていても、
同居している妹や母親の事を思うと自分だけの夢を見ることができない。
日々をただ何となく虚しく過ごしている兄アレッシオ。
妹と同じ部屋で寝るくらい仲良しの兄妹ではありますが、
妹の変化に嬉しくも戸惑う優しい兄でもあります。
そんなアレッシオにも一筋の光が見え始めてくるのですが・・・。
■役とミケーレの背景
この作品でのミケーレは今までと一味違う魅力があります。
ミケーレ自身がターラントと言う鉄鋼業で有名な街の出身であり、
家族もそこで働いていたという境遇・背景があり、
彼自身もこのままターラントにいれば間違いなく父親と同じ職業に
就く事になるのかと思っていたようです。
ですが、特に若い頃は公害の街として知られたターラントが大嫌いで
何とかして街から抜け出したいと思っていたそうです。
だからこそ、街で過ごす人々の暮らしぶりも手に取るようにわかったのではないでしょうか。
そしてはじめて故郷と向き合ったのではないかと思います。
ミケーレ演じるアレッシオは、全編を通して寂しさや人生を諦めどこか冷めていながらも、
何かの拍子に爆発してしまいそうな鬱屈した思い、
そして時折見せる渇いた欲望の表情に男らしさと色気があり、
そんな内面の複雑さを目で表現していてなかなかいい演技をしているなと思います。
イタリア語字幕のみでしたので、詳細は理解できてはいないのですが、
少し物悲しい内容ではありますが、常に広がる青い空と、
淡々と一歩引いた視線で撮っているので多少は救われます。