イタリアの南部の都市、ターラントに住む高校生のティツィアーノ。
家族は両親と幼い妹。父親はいるにはいるが不在がちで職業も不安定。
母親が働き、ティツィアーノも怪しげなアルバイトで少し稼いでいる。
頭はいいが、学校の勉強はつまらなく感じていて熱心に通ってはいない。
根っからの悪ではないが、誘惑の多い街、そして鼻っ柱の強いティツィアーノ、
いつしか街の裏社会のボスのトニオと知り合うようになる。
父親はそのボス、トニオに借金があり、その返済をめぐり父親はトニオから
痛い目にあう。そんな父親を情けなくも思いながら、トニオの鼻を明かしてやろうと
トニオの留守に家に忍び込み金庫からお金を盗み出す。
結局ティツィアーノはトニオに捕まり、人を殺し刑に服したら赦してやろうと言われ、
その通りに罪を重ね、少年院へ行くことになる。
出所後、実家へ戻るが家族や家の様子が以前と異なり小綺麗になっている。
ホームパーティーの最中、トニオがご機嫌でやっきてその理由を知ることになる。
逃れられない犯罪集団、ティツィアーノは全てを捨てる覚悟で恋人と共に
街を出て行く決心をする。
■ミケーレの故郷、ターラント
この映画の舞台はまさにミケーレの故郷プッリャ州の都市ターラント。
プッリャ州はオリーブオイルや農産物が豊富な州として有名ですが
ターラントは工業、重工業の街、そして公害の街としても有名。
イタリアの地域格差は有名ですが、ここターラントでも若者の犯罪、
失業問題、大気汚染による公害などが深刻のようです。
ミケーレの本Rubare la vita agli altriに記述されていますが、
直ぐそこに広がる犯罪、選択肢のない将来、工場から出る有害な煙・・・
そういったものからとにかく逃れたかった、脱出したかったと書いています。
ミケーレはティツィアーノと異なり、犯罪ではなく音楽と詩と本に青春を捧げて
いたようですが、逃場のない澱んでしまった空気が漂う街を脱出したかった、
と言う点は共通していたのかもしれません。
因みに住宅や団地などはミケーレの育ったパオロ6世地区で撮影したようで、
まさに地元、ミケーレの育った環境を知ることができます。
そして、2012年に出演するACCIAIOでは、ミケーレ自身の家族と周辺を写し
出すような映画に出演することになり、あれだけ嫌っていた故郷ターラントに
正面から向き合わざるを得なくなります。今では故郷ターラントの再生に
関わる様々なイベントや発言も積極的に行っています。
関わる様々なイベントや発言も積極的に行っています。
そして映画のタイトルのmarpiccoloとは、ターラントを囲むようにある
ターラント湾の事を指します。
■スキンヘッド
この映画の撮影はFORTAPASCのすぐ後に撮影されたのではないでしょうか。
メーキングの映像を見ると、リハーサル風景でのミケーレはFORTAPASCのリコ役の
そのままのモッシャモッシャの髪型に太い髭をつけています。
スキンヘッド風の短い刈込みスタイルに刺青を入れて(フェイクですが)、
街の裏社会の若いボス役に変身をとげています。
決して声を荒げず、マイルドな顔立ちに時折見せる笑顔、人懐っこい表情、
そのギャップと裏切られた感がとてもよく作用して、
どことなく正体不明で、執拗に絡みついてくるそんなボス役を演じています。
ミケーレが映画等で演じる“悪役・ワル”、意外にと言うか妙にはまっていて、
何だかこういう悪い人いるかもね~、なんて思って今うほど悪い奴が似合います(笑)
marpiccolo
制作年:2009年
時間:93分
監督:Alessandro Di Robilant
出演:Giulio Beranek、Anna Ferruzzi 、ミケーレ・リオンディーノ他
※日本語で検索が出来ない方のお名前はイタリア語表記のままです。
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拡がる青空 |
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荒涼とした土地 |
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人よりワンちゃん・・・ |
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どことなく不気味な若いボス |
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メイキングより、リラックスし過ぎ |
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撮影待機中、地元ならではの表情? |